□ 第69回「明暗反転」

 ユーヴェ戦の勝利で自信を取り戻したカンにあってもっとも気を良くしたのが決勝点となる先制弾を決めたルーグッグスである。アンリ、キヴィ、ピレスの代わりとして欠場者があればどこでもこなすルーグッグスはルドルッティーにとっても頼もしい選手に成長していた。
 続くミラン戦もルーグッグス、キヴィ、ピリニャークのユース出身の3人が暴れまわり昨季の欧州王者を3−0でサンシーロのピッチに沈めた。特にルーグッグスは1得点2アシストと大活躍しイタリア紙からも高い評価を得た。
 結局WCSは第5節で粘るブレーメンを4−3で下したカンがベスト8一番乗りを決めた。カンに敗れたユーヴェはミラン、ブレーメンと引き分けて最終節まで2位を争うことになった。決死の覚悟でノルマンディーにやってきたユーヴェをすでに勝ち抜けを決めたカンが迎え撃つ。
 試合前のロッカーでキヴィが檄を飛ばす。
「トーナメントにユーヴェが残ると厄介だ。ここで叩き潰すぞ!!」
ピッチに現れたカンの選手はユーヴェの選手に引けをとらない気合の入った表情をしていた。ここでユーヴェを叩いておけば一番嫌な相手とトーナメントで戦わなくていい。しかし、そんなことよりなによりホームでユーヴェに勝ちたい。ただそれだけだった。
 前半から両チーム果敢に前に出る激しい試合展開となった。引き分けでもミランの結果次第で敗退が決まるユーヴェは鬼気迫る勢いでカンのゴールに迫るが、カンはアンリ、ピリニャークの最高速カウンターで応酬する。ブッフォンとライブニッツは息つく暇もないが高い集中力と意地でゴールを守る。
 試合は両者一歩も退かず後半へ入る。後半8分、ピリニャークの突破を止めようとしたモンテーロが足を払ってしまい警告。さらに10分にも手でピリニャークを押さえつけてファウルをとられると小競り合いに発展しモンテーロは2枚目の警告で退場、ピリニャークも警告を受けた。しかし、このファウルで得たFKをルーグッグスが決めてカンが先制点を挙げた。コースは読んだブッフォンだったが、キックのスピードとコースがそれを上回るものだった。
 この時点でユーヴェのベンチにはミランがブレーメンに2−1でリードという情報が入っていた。このままではユーヴェのグループリーグ敗退が決まる。カンは攻めに出たいユーヴェを焦らすようにキヴィとルーグッグスがボールをキープする。キープに入ったこの2人からボールを奪うのは困難を極める作業である。
 後半41分には左サイドで曲芸でもしているかのようにボールをキープするルーグッグスが突如スピードを上げてゴール前に切り込むとたまらずチュラムがファウル、ペナルティーエリアのギリギリ外でFKを得る。このFKを今度はキヴィが決めてユーヴェに止めを刺した。
 1試合で2本のFKを決められたことはブッフォンにとって屈辱だった。彼はいつものようにライブニッツと握手することなくロッカールームに消えていった。

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