□ 第66回「英雄再び」

 『カン・アスレチック・クラブがメーメット・ショル獲得!!』
シーズンが終わったばかりの6月、こんなニュースがフランスを駆け巡った。メーメット・ショルといえばカンにとっては英雄であり、“最初の”王様である。

 カンをD1に昇格させ、D1でもリーグ制覇に貢献したショルだったが、当時抱えていた膝の故障でチームを去りドイツでひっそりと引退するつもりだった。しかし、奇跡的に膝はかつての輝きを取り戻し、ショルはドイツで所属したチームの事情もあってウェスタン・リーグD1のベティスに移籍した。

 ここでショルは念願のチャンピオンシップ出場やマスターズ・カップ制覇を経験した。しかし、昨季はチームが最終節まで残留争いをするなど低迷。彼自身も1得点4アシストという不本意な成績しか残せなかった。

 契約も切れるため引退も考えたショルだったが、そこにカンのスラングソンGMから声がかかったのだ。「もう一度リンゴを食べにこないか?」と。ショルはすぐに決断し、再びノルマンディーに戻ってきた。

 入団会見の席でショルは「ベテランとしてチームに貢献したい。ポジションはこだわらないよ。チームの駒として貢献できればいいと思っている。」と話した。

 ショルの復帰を一番喜んだのがショルの後継者であるキヴィだ。彼らは非常にいい関係にあり、オフや対戦した際にはよく食事にいったりして親交を暖めていた。キヴィはショルの加入についてこう話している。「彼は僕のアイドルだった選手。今はよき友人でもあるし、尊敬に値するプレーヤーでもある。彼から学ぶことは多いだろうね。仲良くやりたいと思うけどポジションは渡さないよ(笑)。」

 このオフのカンの動きはそれだけではなかった。出場機会が限られていたミャルビーが移籍し、DF・DHともにこなせるトゥドールが復帰した。ショルが去った翌シーズンにやってきたトゥドールは高い守備力でチームのチャンピオンシップ・ベスト8進出に貢献したものの財政難により放出されていた。

 ルドルッティー監督はこのトゥドールとガラスをCBで組ませることでよりリスキーな攻撃サッカーを展開できると考えていた。アンリ、キヴィ、ピリニャークを3トップ気味に配置し、ピレス、チュルナト、ユーゴーにオーバーラップしたカンデラ、ラヴィスが加わり中盤を作り、トゥドールとガラスが守る。これがルドルッティーの考えるカンの今シーズンの形である。

 カンが着々と来季へ向けて補強する中、ライバルたちも動きを見せていた。昨季2位のレアル・ソシエダはHSVから日本人ストライカーの鈴木(隆行ではなくエディット)を獲得し、懸念だったコバチェビッチのパートナーを手に入れた。昨季3位と躍進したボルドーはHSVで鈴木と2トップを組んでいたファン・ホッホ(育成選手の完成したものをエディット)を獲得した。

 この2トップはHSVでリーグ優勝2回の実績を誇るアタッカーで、各国のビッグクラブが獲得を熱望していた選手である。鈴木はスピードとパワーでゴールをこじ開けるシェフチェンコのようなタイプのFWで、ファン・ホッホはドリブルが武器の1.5列タイプの技巧派である。

 シーズンオフも終わりに近づき各チームの調整具合が聞こえてくるとサポーターは今シーズンのチームに期待と不安を感じながら胸をときめかせる。カンのサポーターが願うのはチャンピオンシップでユーヴェに雪辱を果たすこと。しかし、これには組み合わせによるところも大きい。前回は再戦までに3シーズンを要した。サポーターの注目するチャンピオンシップの組み分け抽選は来週行われる…。

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