チャンピンシップ準々決勝第2戦、その日のトリノは冷たい雨が降っていた。ノルマンディーからやってきた欧州王者の表情は王者のそれではなかった。彼らはこのデッレ・アルピに足を踏み込むのを恐れる、まるで残留争いをするチームのようであった。
前日から降り続ける雨はカンの武器である早いパス回しの障害になることは明白だったが、ルドルッティー監督とエールTDがそれ以上に心配だったのはクリスタンバルとガラスを欠くDFだった。バルデとフォックスを起用することになるのだが、ラウールとディ・バイオのコンビを止められるかは大いに疑問である。
監督とTDの疑問の答えはすぐに示された。前半開始早々にラウールが重過ぎる先制点を左サイドネットに突き刺したのだ。カンの中盤は動きが重く、アンリは前線で孤立した。キヴィは雨と執拗なマークでろくにボールも触れずイライラを募らせる。
ユーヴェの術中に落ちたカンは音を立てて崩れていく。自慢のキープ力は影を潜めキヴィは何度も天を仰いだ。顔に降り注ぐトリノの雨は冷たくカンの自信を濡らしていく。
後半7分にディ・バイオがゴールネットを揺らしたときカンの選手に反撃の力は残っていなかった。トリノまで応援にきたサポーターはユヴェンティーノの大合唱の中に消え、欧州王者のプライドはトリノの冷たい雨の中に消えていった。
この惨敗を新聞各紙は大々的に取り上げて酷評した。カンにはああいった場面で若い選手を引っ張れるベテランがいない。メンバーには30歳を超えるようなベテランはミャルビーしかおらず、そのミャルビーもベンチ入りするかどうかの微妙なポジションである。
頼れるベテランの必要性を感じたカンの首脳はフリーで獲得できるベテラン選手をスカウティングするようにスラングソンGMに要請した。
チャンピオンシップ敗退の翌週のリーグ戦でもカンはショックから立ち直っておらずホームにもかかわらず前半だけでポルトに3点のリードを許す不甲斐ない展開を見せる。ルドルッティーがキヴィとピリニャークを前半で引っ込めるという荒療治で喝を入れると後半から投入されたルーグッグスが3ゴール2アシストと暴れ回り大逆転勝利を手にした。
チャンピオンシップ敗退は一部の選手の士気の低下を招いたが、来季へのアピールを考える選手のモチベーションは上がる一方だ。特に目立ったのがルーグッグス、チュルナト、ファン・デル・メイデである。ルーグッグスはキヴィの控えだけではなく、中盤やトップでも機能することを証明し、ファン・デル・メイデはピリニャークとポジション争いができるレベルのパフォーマンスを見せている。
シーズン終盤になって攻撃的サッカーを志すルドルッティーとエールは来季の構想について「より攻撃的に、完封より打ち合いがしたい。」と語っており、欧州を制覇したカンの4−2−2−1−1をいじる可能性を示唆した。
結局カンはチャンピオンシップを落としたものの、リーグを無敗で制し、リーグカップとの2冠を達成した。選手たちは2冠を喜んだがユーヴェに惨敗したトリノでの一夜が暗い影を落としていた。しかし、雪辱のチャンスは案外早くやってくるのである
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