□ 第59回「銀河系選抜VS欧州王者」

 平均年俸1245Pts軍団のレアル・マドリーをホーム、スタッド・マチルダ・ド・カンに迎えるカン・アスレチック・クラブの選手にはピリピリとした緊張感が漂っていた。選手の名前だけ見れば明らかに世界最強の豪華なチームである。ルドルッティー監督は守備の確認を念入りに行いこの試合に備えた。ロナウド、オーウェンを走らせない。それがキーになる。ジダンやリヴァウド、ベッカムにボールを持たせてカウンターで沈める。それがルドルッティーのプランである。まともに打ち合いをしたら勝ち目はない。
 試合は中盤での主導権争いで幕を開けた。ジダンとユーゴーが激しいマッチアップで火花を散らし、ベッカムはラヴィスが自由にさせない。逆にカンはキヴィをF・カンナバロとエメルソンに、ピリニャークをマルディーニに抑えられスピーディーな攻撃に持ち込めない。しかし、守備力で勝るレアル・マドリーが徐々に押し込みセットプレーのチャンスをつかみ始める。
 フランス史上最高の選手の一人であるジダンとのギリギリのマッチアップを続けるユーゴーはジダンの様子に疑問を覚えた。どことなくタイミングを計っているような…。新加入の選手と息を合わせるような…。
「まだ本気ではないというのか?」
 怪訝な表情のユーゴーに気づいたジダンが囁く「なかなかクセの強い連中でね…。でもおかげでタイミングをつかめてきたよ。そろそろスピードをあげようか。」
 そう言うとジダン、ベッカム、リヴァウドが華麗な、そして鋭いパスワークでカンの守備を切り裂く。素早くポジションを変えるジダンを追いかけながらユーゴーは陣形が右サイドに引っ張られて崩れていることに気づいた。「しまった…。」ジダン、ベッカム、ロナウドと渡ったボールが再びジダンに入る瞬間を狙って飛び込むが絶妙なワンタッチ・コントロールでかわされる。「やられた…。」ジダンががら空きになった左サイドへ早いパスを出すとカンデラを振り切ったオーウェンがフリーでゴールに叩き込む。レアル・マドリーの突然のギア・チェンジにまったくついていけなかったカンのDFたちは呆然とした。
 ベンチも頭を抱えていた。前節のソシエダ対マドリーを見たところではここまでの連携はできていなかった。この試合に合わせてきたのか…。
「ちっ…」
 舌打ちしたのは前線にいるキヴィだった。どうやら目の前で見せられた華麗なレアル・マドリーの攻撃が気に食わないようだ。ましてここはホームだ。無様な試合などできまい。
 火のついたキヴィを抑えることはかなりの困難を要する。たとえそれがスタム、サムエル、F・カンナバロ、マルディーニの鉄壁の4バックでも例外ではない。アンリのスピードを囮にして何度も突破を試みるキヴィにマーカーであるエメルソンとサムエルは手を焼いていた。2人で止めに行けば後ろからファン・デル・ファールトとピレスが上がってくる。この駆け引きに勝ったのはカンだった。キヴィが右サイドでボールを受けて中に向かって切り込む。それに釣られたサムエルのスペースをカバーしようと中に絞ったマルディーニのスペースをピリニャークが突いた。右に開いてきたキヴィに合わせて中央にポジションをとっていたピリニャークはマルディーニの視界から完全に消えていた。
 右サイドを破ったピリニャークにレアル・マドリーのDF全員が目線を向けた瞬間に一歩早く動き出したキヴィがピリニャークの低く速いクロスに右足を合わせて同点となるゴールを決めた。レアル・マドリーの先制点で気落ちしていたサポーターは立ち上がり大歓声を上げてこのゴールを喜ぶ。そして1−1の同点で前半が終了した。
 次の1点が重要なことなどわかりきったことだったが、後半開始早々にサムエルがアンリを倒してPKを与えてしまう。これをアンリがきっちり決めてあっけなく逆転に成功。その後はシュートの打ち合いになるが後半から当たりだしたライブニッツが好セーブを連発して勝利をものにした。大舞台ほど調子の上がるライブニッツはサポーターからも頼りにされるGKに成長した。尊敬するジャンルイジ・ブッフォンを超えることが彼の今季の目標である。
 試合後のルドルッティーは上機嫌だった。「難しい試合だったが、ライブニッツのおかげで勝ちを拾えた。彼はすでに世界クラスのGKだが、いずれはカーンの後継者になるだろう。彼と同世代の若い選手たちもいい働きだった。彼らがこのまま成長すれば我々は欧州のトップとしての地位を保てるだろうね。」

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