□ 第49回「不安」

 WEFAチャンピオンシップ準決勝第1戦はカン・アスレチック・クラブのホーム、スタッド・マチルダ・ド・カンにレアル・マドリーを迎えて行われる。大型補強で世間を賑わすレアル・マドリーだが、リーグでは降格もありうる位置にいながら欧州ではベスト4に残るという奇妙なシーズンを送っている。一方のカンはリーグでは2位に10ポイントの差をつけて独走し、カップ戦でも決勝に駒を進める最高のシーズンを送っている。
 これまでの相性とレアル・マドリーのリーグでの低迷ぶりを見れば楽勝ではないか?という質問に対してエールは「ではなぜ彼らはこの舞台まで来れたんだい?チャンピオンシップをここまで勝ち抜いたチームには当然敬意を払うべきだし、全力で戦うべきだ。我々はこんな大舞台で手を抜けるほど強くはないからね。」と語る。しかし、カンはDHのユーゴーが怪我で欠場、代役として活躍していたビディッチもコンディション不良、さらにはCBクリスタンバルまで虫垂炎で出場が危ぶまれるなどベストの布陣は望めない状況にある。さらにFWもシェフチェンコがここ5試合ノーゴールと不調で得点力にも不安があった。直前の試合ではセルタに2点を先行され終了間際にかろうじて追いつくなどチーム状態は良いとはいえない。
 エールはここに新加入ながら開幕からフィットしているフォックスを起用し、CBもバルデとガラスのコンビを起用することに決めた。しかし、この苦肉の策が見事に当たることになる。
 レアル・マドリーの2トップはロナウドとポルティージョ。二人とも高さに強いタイプではないためバルデとガラスの高さに対抗できない。また、カンデラとラヴィスがほとんど上がらずにサイドをケアしたためにベッカムの正確なクロスも期待できずレアルはジダンが中央からなんとか前線にパスを通すしかない状態になってしまった。しかし、このジダンへのボールをピレス、ファン・デル・ファールト、フォックスがケアしてジダンに仕事をさせない。結果としてレアルの攻撃は実る見込みのないロングボールを前線に放り込むしかなくなりカンに主導権を握られる。
 カンは左のピリニャークがサイドに張り付くことでレアルのDFを広げ、ピレス、キヴィ、ファン・デル・ファールトが中盤を制圧して華麗なパス回しでレアルのゴールに迫る。しかし、不調のシェフチェンコがうまくゴールに結び付けられない。それでもチーム得点王のキヴィがその穴埋めをするように際どいシュートを放ち続ける。26分にはファン・デル・ファールトの折り返しから左足で強烈なシュートを放つがカシージャスが驚異的な反応でCKに逃げた。しかし、このCKをカンは活かす。
 カンのCKは豊富なバリエーションと正確なキッカ―のおかげで抜群の威力を誇っている。基本的にはピレスが蹴るが、左足ならラヴィスとルーグッグス、ロタンもいる。右もキヴィ、ピリニャークとキッカーが揃っている。この日はすべてピレスが蹴っていた。先制点の場面では長身のバルデとフォックスがファーサイドに走りこんでDFを釣り、ニアに後方からトップスピードで飛び込んだピリニャークがダイビングヘッドでゴールを決めた。
 このゴールはレアル・マドリーにとって大きすぎる痛手である。カンのDFはリードを守ることにかけてはリーグNO.1であり、相手が前に出るのを利用する狡猾さも十分持ち合わせている。
 結局、レアルは0−1でホームに帰ることができただけでも満足するべき内容しか残せず第1戦を終わった。
カンにとっては3−0で勝ってもおかしくない内容だっただけにエールが失望を覚えたのは言うまでもなかった。昨季は0−0、一昨季は1−0でホームでの試合に勝利しながらアウェイで敗退しているだけにエールはこの試合でもっとリードを奪いたいところだった。しかし、シェフチェンコが決められない。この試合でのパフォーマンスが後にカンとシェフチェンコの決別に大きな影響を与える…。

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