□ 第48回「開いた口が塞がらない」

 彼らにとって月曜日の朝は4種類に分かれる。彼らというのはカン・アスレチック・クラブの若手選手のことだ。まず1つ目は昨晩の勝利を新聞で再確認し、誰の評価が高かったのかを確認する場合。2つ目は逆に戦犯は誰だったのかを確認する場合。3つ目は試合がなかったのでたまには真面目に社会欄でも読んでみる場合。そして4つ目は自分たちの試合がどうでもいいような扱いを受けるほどとんでもないことが起こった場合である。
 ブレッシアに3−0で勝利した翌朝は4つ目のパターンの好例であった。前日の試合でD1での3点目を決めていい気分で朝を迎えたルーグッグスは赤い頭を掻きながら起きてきた。居間に下りると父親が新聞を読んでいる。「親父、昨日の俺のゴールのことなんか書いてあるかい?」得意げに聞く息子にこの父親は白い顔をして口をパクパクさせることしかできなかった。新聞にはオーウェン、レコバ、リヴァウド、サムエル、マルディーニ、F・カンナバロ、スタム…。そこには名立たるトッププレーヤーの名が並んでいた。「バロンドールの候補者かい?」そう聞きながら新聞を手にしたルーグッグスは父親と同じように口をパクパクさせるしかなかった。これらビッグネームはすべて来季からレアル・マドリーに加入する選手なのだ…。
 ジャン・エール監督はスラングソンGMとともにローラン会長の部屋で昼食をとっていた。話題は翌週のアウェイでのバルセロナ戦ではなく、マドリーのことである。カンはレアル・マドリーに対しては非常に分がよく、カモにしているといってもいい成績が残っている。しかし、来季はそうもいかない…。
 このレアル・マドリーの大補強はカンの選手にも向けられていた。キヴィには移籍金18000Ptsという破格のオファーがあったし、ピリニャークにも年棒1500Ptsでのフリー移籍の話が来ていた。エールを信頼しているこの二人はカンに残ることを希望したためこの話は破談になったがこれはカンの首脳に大きな衝撃を与えていた。せっかく育て上げた若手を奪われるなどローラン会長には耐え難いものだろう。この会長は若手が大好きでユースへの投資はかなりのものがある。その賜物としてキヴィやピリニャークのような選手が出てくるのだ。
 「さてと、レアル・マドリーは置いといてとりあえずは週末のバルサ戦に勝って2位のヴァレンシアにプレッシャーをかけますよ。リーグで余裕を持っておかないとチャンピオンシップがキツイ。来週にはカップ戦もありますしね。3冠でもとればボーナスぐらい出るんですよね、会長?」エールの自信有り気な表情を見ながらローランは笑う。「レアル・マドリー並みに出してやるぞ(笑)」

PS2RC

Copyright © WEYS.net All Rights Reserved.