カンのカップ戦決勝進出でスタッド・ノルマンディー・メモリアルのラストゲームは決勝のマルセイユ相手に決まった。このスタジアムでの過去の対戦成績は21勝44敗と大きく負け越しているが、これはフランスリーグ時代の数字が大きく反映されている。ML開幕後はマルセイユに負けたことはない。
カップ戦決勝を翌週に控えたカンはリーグ第22節のレアル・マドリー戦のためスペインにいた。前回の対戦では控え組で3−1と勝利しカンプ・ノウをブーイングで染めたが今回はベストなメンバーを起用した。エールはD2から昇格した3シーズン前の開幕戦であんなに強く見えたマドリーが優勝と関係の無い位置にいることが不思議でならない。
この3シーズンでウェスタン・リーグの勢力地図は大きく変化した。レアル・マドリー、バルセロナ、バレンシアなどが低迷しディポルティボ、ソシエダ、ベティスのスペイン勢とカンが優勝を争う図式に変わってしまった。そして残留争いを繰り広げるだけだったフランス勢も欧州行きを争うなど力をつけている。
シェフチェンコの2得点などでレアル・マドリーを4−0で一蹴したカンは続くポルト戦も3−0で圧勝しカップ戦決勝を迎える。スタッド・ノルマンディー・メモリアルでの最後の試合である。
ノルマンディー上陸作戦から20周年を記念して建造されたこのスタジアムは1万9000人収容の小規模なサイズである。しかし、音が響きやすくサポーターの声援がこだまするスタジアムでもある。ここで得た栄冠はこれまでウェスタン・リーグD2優勝1回、D1優勝2回である。40年間でわずか3回。しかも全てここ4年間で得たものである。そして4回目の優勝を賭けてマルセイユとの試合が始まる。
カンは掛け値なしのベストな布陣でこの試合に臨んだ。相手はリーグ最下位のチームだが最高の試合でこのスタジアムの歴史を閉じることが彼らの使命である。
試合は大方の予想通りカンが一方的に攻める展開となったが、マルセイユはゴール前でうまく密集を作りひたすら守り倒す。打っても打ってもDFに当たったりGKが好セーブで防いだりで0−0が続く。しかし、これも最後の演出に過ぎなかったのかもしれない。
後半ロスタイムについに優勝を決める1発が飛び出す。決めたのはこのスタジアムでプレーすることを夢見てフットボールを始めた天才・アンティ・キヴィだ。華麗なフェイントでP.A.内の混戦の中からシュートコースを作り出しシュート、これを元カンのフォルネンダーが体に当てて防ぐもリバウンドに素早く反応して強烈なシュートをゴール左隅に突き刺した。
このゴールで優勝を手中にしたスタジアムは歓喜の渦に包まれた。スタンドにはかつてここでバルサとの決勝を戦ったショルの姿もあった。このリーグカップ制覇はカンの悲願のひとつであった。それを劇的な形で獲得しこのスタジアムの最後に添えられるのは格別であった。
キャプテンのシェフチェンコがたかだかとカップを掲げ叫ぶ姿はこのスタジアムでの最後にして最高の思い出として人々の中に残り続ける。そして新たなスタジアムとともにカンの戦いは続いてゆく…。
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