□ 第34回「力の差」

 トリノでの第2戦は凄惨なものとなった。ユーヴェもまた、第1戦は抑え気味に戦っていたのである。そしてホームに戻った第2戦でその強さを遺憾なく発揮した。
 試合開始とともに畳み掛けるような波状攻撃を見せると17分にはP.A.内でラウールがガラスのファウルを誘い出してPK。さらにガラスは退場処分となってしまう。このPKをディ・バイオが決めてユーヴェに先制点が入った。
 そのくらいでは引き下がらないカンは19分、ピレスのCKをクリスタンバルが合わせて同点とする。CKがここでも活きたのだ。これでトータルで1−1だがアウェイゴールで勝ち抜ける。しかし、ユーヴェ相手に10人ではこのアドバンテージを守れない。何度も決定機を作られる。
 そして24分に今度はカンデラが退場となってしまう。この退場でDFを入れざるを得なくなったエールはピリニャークとファン・デル・ファールトを下げてルベイイェールとオラッラを投入し守りを固める。
 しかし、ユーヴェの攻撃は厚く、何度も何度もカン守備陣を切り裂く。そして前半終了間際、フォーチュンのドリブル突破からP.A.内のディ・バイオへ。ディ・バイオのシュートはライブニッツが素晴らしい反応で弾くが詰めてきたフォーチュンがクリアしようとしたオラッラより1歩早くボールをゴールに流し込んだ。
 これでカンは9人であと1点取らねばならない状態になってしまった。エールは3バックにして3−3−2に変更してマルセイユ戦で良かったチェルナトを投入した。しかし、9人のカンに点を与えてくれるほどユーヴェは甘くない。次第に追い詰められ後半も2人の退場者を出しカンはトリノで散っていった。
 カンはまたしてもC.S.トーナメント1回戦で負けた。昨季は負けたあと泣き崩れたキヴィだが、今回はうずくまったまま立ち上がれないGKライブニッツを起こしに行った。キヴィが声をかける。「また来季、ここまで来ればいいんだ。まだこのチームは若いんだから。」
 しかし、ライブニッツは顔を上げられない。「僕がロスタイムにあのシュートをちゃんと止められていれば…。」まだ19歳のライブニッツはハーフタイムにもディ・バイオのシュートを前にこぼしてしまったことを悔やんでいた。しかし、フリーだったディ・バイオが放ったシュートは誰もが決まったと思う程完璧なシュートだった。あれに触れただけでもライブニッツは賞賛されるべきものだった。
 「あんな凄いセーブしても泣くなんて欲張りな奴だな。」声をかけてきたのはユヴェントスのGKジャンルイジ・ブッフォンである。ライブニッツを引っ張り起こしたブッフォンは19歳の若者に昔の自分を見るような表情で言った。「悔しいなら練習して上手くなってこい。C.S.まで来ればいつでも相手してやるよ。」
 その言葉を聞いてライブニッツは涙を拭いてブッフォンに握手を求め、胸を張ってピッチをあとにした。「あいつはスゴイ男になるぜ。」そうキヴィに呟いてブッフォンはサポーターの待つクルヴァに走っていった。

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