□ 第25回「エールへの誘い」
 キヴィの鮮烈なデビュー弾でアトレティコを撃破したカンはその後も勝利を重ねていく。リーグでのバルセロナ戦をバルサ・キラーことファン・デル・ファールトの2発などで4−0と大勝するとリーグで9連勝、C.S.もグループリーグを難なく突破してみせた。

 シェフチェンコは今季も得点王へ向けて得点数を伸ばし13節終了時点で12得点を挙げていた。新加入のトゥドールとエルゲラもよく機能し、このまま3冠もありうるのではないかという声さえあった。
しかし、事態は急転する。カンのメイン・スポンサーとしてユニフォームの
胸にも名前の入っているF社が世界を覆う不況のあおりでスポンサーから
の撤退を決めたのだ。さらに建設中の新スタジアムのスポンサー2社がそ
れぞれ倒産、吸収合併で無くなりカンの台所はたちまち火の車になってし
まったのだ。スタジアムはすでに着工しており、計画を止めるわけにもいか
ない。しかし、自己資本のみで完成させるにはあまりにも多額の出費であ
る。

 結局、ローラン会長は高額選手を放出するしかないという結論にいたった。ただし、WEFAチャンピオンシップで優勝すれば計算の上では現在所属する選手をとどめておける。しかし、今回が初挑戦となるC.S.でいきなり優勝するというのはかなりの難題である…。

 選手たちがその事実を知ったのは15節の翌日の新聞だった。バレンシアに4−0で快勝した選手たちは自分の評価点を見ようと手に取った新聞に「カンに衝撃!!」という文字が躍っているのを見て絶句した。さらに開いた別のページには「エール監督にインテル、リバプールなどからオファー!代表監督も?」という見出しがあり選手に追い討ちをかけた。カンの選手たちはジャン・エールという若手の熱血監督に信頼を置いていた。チャンスをくれるし、話もよく聞いてくれる。彼の下でプレーするのは居心地がいいという選手が多かった。そのエールがチームを去る可能性があるとなると選手たちは不安を感じずにはいられなかったのだ。

 ローラン会長はエール監督を手放す気は無かった。彼はエールが強力でファンに愛されるチームを率いて新スタジアムで欧州王座に就くのを夢見ていた。エールはD2からここまでひたすら勝利を手にしてきた偉大な監督であり、尊敬に値する男である。手放すにはもったいなさ過ぎる。

 選手たちは財政に問題を抱えるクラブの事情によって余計なプレッシャーにさらされてしまうことになった。そのプレッシャーはパフォーマンスの低下を招き、次第に結果にも響いてくる。リーグ戦は前半に溜め込んだ貯金のおかげで独走態勢を固めていたが、カップ戦ではそうはいかない。カンは結局、優勝が義務という重すぎる十字架に押しつぶされてしまう…。

PS2RC

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