□ 第18回「華々しく」
 後半はバルサの選手とサポーターが予想したとおりカンの猛攻で始まった。

 後半からボロブスキーに代えてカベナギを入れ4−4−2のダイアモンドで攻撃的布陣に変わったカンは両サイドのアタッカーがバルセロナDFに果敢に仕掛けてチャンスを生み出す。

 後半開始10分で6本のシュートを浴びせGKリュシュトゥを脅かすと13分、シェフチェンコが強引な突破から絶好の位置でのFKを得る。 大歓声の中、ボールをセットしたショルがまるで練習でもしているかのように落ち着いてゴール右隅にボールを沈める。 リュシュトゥは懸命に手を伸ばしたがポストに当たるか当たらないかのコースを飛ぶボールには届くはずもなかった。

 1点差になりスタンドのサポーターは今年1番の大声を張り上げて選手の背中をグイグイ押した。 17分にはショルがドリブルで仕掛けてチャンスを作る。右サイドでボールを受けるとチェックに来たコクーとマルケスをかわして中へ切れ込みリュシュトゥを引きつけてシェフチェンコへラストパス。しかし、プジョールが懸命に足を伸ばしてこれをカットして得点には至らない。

 その後も猛攻を続けるチームの中心として動き続けるショルだったが、今季中盤に痛めた古傷の痛みは限界に達しようとしていた。 後半に入る前にショルから「もって20分」と聞かされていたエールは後半22分、何でもないパスミスを犯した後にショルが一瞬ベンチに視線を送ったのを見逃さなかった。アップしていたセルナトを素早く準備させて交代を告げた。 ショルを下げるというエールの采配に大ブーイングを浴びせた。彼らはショルのラストゲームを見に来たのだ。

 しかし、スタジアムの大型スクリーンに映ったエールの目に今にも零れ落ちそうな涙を見つけて彼らは大ブーイングをやめ、グラウンドを去るショルをスタンディングオベーションで見送った。「ありがとう」の人文字とともに…。

 ショル交代後もカンは攻め続けた。シェフチェンコとカベナギがリュシュトゥを襲い続けたがこのトルコ代表GKを破るのは困難だった。 時折バルサはカウンターを試みたがクリスタンバルとエル・カモクーリが身を挺してこれを防いだ。

 刻一刻とタイムアップは近づくがバルサの守備は崩れない。彼らも相当の覚悟でこの決勝の舞台に乗り込んできたのだ。リーグ戦でカンに2勝しながらも王座を譲り渡してしまったバルサにとってこのカップ戦は獲らねばならないタイトルであり、守らねばならないプライドであった。 たとえそれが敵地であっても負けるわけにはいかない。そんなプライドがバルサの選手を突き動かした。

 とうとう時計は45分をまわりロスタイムに入った。審判の出したロスタイムの目安は3分…。 30分過ぎにラヴィスに代えてロタンを投入したカンはエル・カモクーリを前線に上げて両サイドからクロスを上げ続けた。 攻撃が単調になり守備がハイボールしかないと思い込んだ一瞬の隙をついて左サイドの浅いところからロベールが低いライナーのクロスをシェフチェンコに合わせた。 シェフチェンコが難しいライナーのボールをドンピシャのタイミングで左足を振りぬいた。GKリュシュトゥは1歩も動けなかったがボールが突き刺さったはずのゴールネットの前にプジョールが身体を投げ出していた。

 カンはまたしてもバルセロナに勝てなかった。最後まで追い詰めながらも彼らはバルセロナのプライドに負けたのである。 バルセロナの選手がカップを掲げる姿を満員のスタンドは拍手で祝った。彼らは最後まで戦ったのだ。それで敗れたのなら潔く負けを認め讃える。

 スタンドの片隅で肩身の狭い思いをしながらも懸命に声援を送ったバルササポーターと、敗れながらも拍手で優勝を祝ってくれたカンのサポーターに応えバルサの選手たちは主役の座をメーメット・ショルに譲った。

 ショルは言葉にならないような言葉でチームとサポーターに感謝を告げ、カン・アスレチック・クラブへの変わらぬ愛情を誓い去っていった。
        
泣き声の混じった大歓声とともに…。
PS2RC

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