□ 第17回「カン対バルサ」
 ショルのカン・アスレチック・クラブでのラストゲームが始まった。1度も勝ったことがないバルセロナを満員のホームに迎えてのカップ戦決勝である。

 やはり苦手意識があるのか前半からバルセロナがペースを握りカンのGKフレイを襲う。来季からイタリアのクラブに行くのではないかという噂に振り回されフレイは精細を欠いていた。 前半25分、CBクリスタンバルのバックパスを中途半端にフィードしてしまいロナウジーニョに決定機を与えてしまう。快速を飛ばしてフォローに入ったラヴィスのクリアで事なきを得たがフレイがいつもの状態でないことは明らかだった。

 エールは後半からGKをイサクションに代えることも視野に入れて6人ほどにアップを命じた。エールは0−0で前半をしのいで後半からカベナギを投入して勝負に出る作戦だった。

 しかしエールの思惑は一気に霧散する。中盤でロナウジーニョに前を向いた状態でパスが入るとボロブスキーをかわしサビオラへパス。サイドに開いて中をうかがうサビオラにカンデラが詰めたがクロスを上げられてしまい、クライフェルトに頭で豪快に決められてしまったのだ。

 先制点を奪われたことでカンは混乱状態に陥ってしまう。焦りから前がかりになり、サビオラにDFラインの裏をつかれる回数が増えていく。 エールは大声を張り上げて指示を飛ばすが選手の頭には届かない。

 そして前半ロスタイム、またしてもサビオラに裏を突かれGKフレイと1対1になってしまう。サビオラのシュートフェイントにフレイが簡単に引っかかってしまい2−0となるゴールを決められてしまう。

 満員のスタンドは沈黙し中には泣き出すサポーターまでいた。グラウンドのカンの選手たちの闘志は「またバルセロナに負けるのか…。」という思いに負けそうになっていた…。

 前半終了後、ロッカーに下がった選手たちは押し黙って下を向いたままのエール監督に恐怖を感じていた。いつもなら大声で檄を飛ばし、尻を叩き上げながらグラウンドに送り出すエールが0−2というビハインドを前に押し黙っているのだ。 不気味な雰囲気に圧倒されるロッカーの空気をショルが切り裂いた。
 「このままでは6万のサポーターとここに来れなかったファン全員に申し訳ない。
相手がバルセロナでしょうと最後まで勇気を持って戦おう。負けるときも最後まで戦うのが我々のサッカーのはずだ。」 それを聞いたエールがやっと口を開く。 「お前らはショルがいないと戦えないのか?」

 それを聞いた選手たちは惨めな姿で笛とともに逃げるようにグラウンドから去ってきた自分を恥じた。そして飛び出すようにグラウンドに向かおうとした。 しかし、エールがいつもの口調でそれを止めた。 「バカもん、まだ後半の作戦を言ってないでしょうが。」

 試合後のショルのセレモニーが無ければとっくに家路についたであろうサポーターは、後半のグラウンドに現れた選手たちを見て帰らなかったことにホッとした。 いつもの闘志みなぎるカン・アスレチック・クラブの選手たちがそこにいた。

 先にグラウンドに出ていたバルサの選手たちはカンの選手たちの表情を見ていつもの状態に彼らが戻ったことを確信した。2戦2勝とはいえカンは最後まで食らいついてくる厄介な相手であることをバルセロナは十分承知していた。

 だからこそ前半から飛ばして先制点を奪いにいったのだ。結果的に2点をリードして折り返せたがそれがセーフティーではないことをバルサは理解していた。カンは最後の笛がなるまで噛み付いてくる。だからこそリーグを獲ったのだと。
PS2RC

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