□ 第10回「会議」
  カン・アスレチック・クラブの敗戦の翌日、エール監督はコーチ、スカウト、クラブ役員らとともに会議に参加していた。議題は今季の移籍市場での動きと今後の展望についてである。2週間後に移籍市場が開くため補強のためにはそろそろ的を絞らねばならない。前日の予想外の敗戦のショックもありみな野心的な補強策を提案した。

 エール監督はDHのバックアッパーである福西とFWの柳沢に不満を抱いていた。会議の席でエールは現場の意見として「福西では1ボランチを任せられないし3ボランチのサイドとしてはスピード的に辛い。それと攻撃面ではかなりスローだ。できれば若くてヘディングが強く、フィジカル的な強さのある選手がほしい。それと柳沢のできには失望している。ポストプレーをするにしてもフィジカルが弱すぎる。あれではスペイン勢には立ち向かえない。それとショルの控えが不安だ。1人司令塔タイプの選手が欲しい。」と補強案を出した。彼の希望を認めたチームは柳沢とトレードでルーマニア人MFセルナトを獲得、そしてボランチにはセルビア・モンテネグロのレッド・スターからビディッチを獲得すると決めた。

 カンの古参役員でこれまで何度も難しい交渉をまとめてきたスラングソンGMが今回も水面下で交渉成立へ向けて話を進めて移籍市場が開くと同時に移籍を成立させるという合意にいたった。彼はミランからシェフチェンコを獲得した時や、ショルをバイエルンから引き抜いたときも難しい交渉とまとめた男である。その彼からこんな情報が入った。「カンデラ、ロベール、ロドリゲス、モレイラにオファーがありそうだ。しかもモレイラへのオファーは値がいい。」これを聞いて会議は盛り上がった。モレイラを放出してスピードのあるFWを獲得しようというのだ。リストアップされた選手は多岐にわたったがエール監督が気に入ったのがHSVに所属するロシアの若手・イズマイロフだった。スピードがあり、ドリブルがうまい。そしてスタミナもあるし、まだ20歳だ。若手の養成が得意なエール監督は彼を気に入った。役員の中にはベテランをとるべきだ、という意見もあったが会長のローランがエールの意見を支持したためイズマイロフにオファーを出すことを決定した。そして収支バランスを保つために福西をイズマイロフとのトレードに、ロドリゲスをバルセロナへ放出することも決まった。

 翌週のPSG戦、選手たちに硬さはなく自分たちの攻撃スタイルに徹するサッカーを展開した。しかしゴールが決まらない…。後半20分過ぎ、エールはカベナギを投入して布陣を4−2−3−1から4−1−3−2に変えた。これが功を奏しロスタイムにシェフチェンコの突破からカベナギが決めて1−0と勝利をもぎとった。続く6節のポルト戦もショル、シェバ、カベナギが決めて3−1で快勝、カップ戦1回戦のマルセイユとの第2戦も1−0で勝利、7節のソシエダ戦は引き分けたものの翌週の8節ベティス戦はPKで先制されながらも終盤に逆転する粘りを見せ勝利して8試合消化の時点で首位と勝ち点で並ぶ2位につけた。昨季のD2で無敗神話を支えた守備陣はD1になった今季もリーグ最小失点をマークし安定している。ただ、得点力不足は相変わらずで8試合で9点とリーグ9位タイ。ここさえ改善できれば上位に踏みとどまれそうだが、簡単に改善できるものでもない。エール監督は連携さえできれば攻撃力は上がるはずだと繰り返している。たしかに中軸を担うショルとシェバの連携は日増しに良くなっており期待を抱かせるようなプレーが増えてきた。

 リーグも中盤に差し掛かりここからは勢いだけでなく我慢のできるチームが勝ち点を拾える。そうなると守備が安定しているカンには期待がもてる。あとは連携とやはりエールの手腕しだいでしょう。
PS2RC

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