□ 第12回「代表への憧れ」
11節でアトレティコを破ったルゴは続く12節のマルセイユ戦も1−0で勝利し2位のポルトに勝ち点差9をつけて独走態勢に入った。昇格一年目のチームが勢いに乗ってリーグ戦序盤を盛り上げることはよくあるが、ルゴの快進撃は勢いだけのものではない。クラウディオ・サンティ監督の戦術がチームに浸透し、見応えのある試合を展開している。
13節・アウェイ、カンプ・ノウでのバルセロナ戦のためチームはカタルーニャに移動した。グティにとっては“クラシコ”ではない初めてのバルセロナ戦となる。クラシコの雰囲気を聞きたがるグラシアとカルストロムに珍しく真面目な態度で応じるグティであった。
ここまで出遅れた感のあるとはいえ、FCバルセロナと戦うためにカンプ・ノウに乗り込むというのはプレッシャーがかかる。それはサンティ監督も例外ではない。この試合で負けたらそのまま転げ落ちるのではないかという漠然とした不安を感じながらもサンティはベストといえる布陣でこの試合に臨む。翌週の14節はホームにレアル・マドリーを迎えるルゴ。ここで連勝できれば、いや、無敗で切り抜けられれば…。そんなことを思うサンティであった。
試合は前半4分に早くもイエローカードの出る激しいものとなった。右サイドに張るグラシアがメンディエタとの連携でチャンスを演出していく。前半はルゴが押し込む展開となるがGKリュストゥと立ちはだかりゴールを割ることができないまま前半を終わる。シュート本数0−6とルゴが圧倒的に攻めた前半だったがバルセロナのゴールは遠くに見えていた。
後半に入ると立場は逆転する。クライフェルトにハイボールを集めだしたバルセロナにルゴは徐々に押し込まれていく。ニエトもメイラもクライフェルトに高さで勝ちきれない。3本に2本は競り負けるためルゴのDFラインは徐々に下がり始める。「ニエト!ラインを上げろ!!中盤と開きすぎだ!!」ベンチからのサンティの怒声も空しくDFラインはかなり低い位置まで下げられてしまった。
イライラを募らせるサンティはカルストロムとポスチガを投入して流れを変えようと試みるがDFラインが下がりすぎているため全体が間延びして得意のショートパスが回らない。「くそ、なんとかならないか…。」サンティがベンチで頭を抱える頃、メンディエタがグラシアに声をかけた。「ラウール、お前のドリブルで右サイドを切り崩すんだ。この試合で目立てばA代表も夢じゃないぞ。」
またバルセロナ陣内から前線のクライフェルトに向けてハイボールが蹴りこまれる。ぐいぐいとシャツを引っ張りあいながらクライフェルトとニエトが競り合う。こぼれたボールはウラを狙ったサビオラではなくニエトのフォローに来たメイラの前に落ちた。すぐ前を向いたメイラにハーフウェーラインまで下がってきたグラシアが声をかける。「メイラさん!こっち!!」ボールを受けたグラシアはサイドライン際を一気に駆け抜けようとドリブルを始める。攻勢に出ていたバルセロナの左サイドをえぐり、スペースをカバーしにきたプジョールと1対1になる。抜けばGKと1対1になる。“ここは絶対に抜かせない!”ファウルしてでも止めようという雰囲気のプジョールと対峙しながらもグラシアは冷静だった。縦に抜きに行くフェイントをかけプジョ−ルを飛び込ませるとタイミングよく後ろからフォローに回っていたジャンナコプーロスにヒールでバックパス。フリーで受けたジャンナコプーロスがクロスを入れるとゴール前になだれ込んできたポスチガが頭から飛び込み合わせる。しかし、このシュートはバルセロナのGKリュストゥの指先をかすめてポストを叩きゴールにならない。 「くそ、ダメか!」いつもの弱気な態度とは違い攻撃的なグラシアの態度に近くにいたジャンナコプーロスとメンディエタは驚いた。「なんかラウールのやついつもと違わないか?」メンディエタも同意見だ。「さっきA代表って言ったのが聞いたかな?」
グラシアはその後も右サイドを何度も突破するが、最後の詰めが甘く得点にはならず。結局0−0の引き分けとなった。カンプ・ノウで勝ち点1を得たサンティ監督は満足とまではいかないが悪い気もしていなかった。“バルセロナと引き分けたんだから”そう思ってしまうサンティである。
カタルーニャからの帰路、珍しく難しい表情を見せるグラシアがいた。彼はシーズン終了後に開幕するユーロ(欧州選手権)、オリンピックについて考えていた。D1リーグで13節の折り返し時点を首位で迎えた。自分もチームの主力として戦えている。A代表に呼ばれることを期待してもいいのではないか?グティやメンディエタらと共にスペイン代表としてユーロで戦うことを期待してもいいのではないか?グラシアはそんなことを考えていた。スペイン代表は予選でもたつきを見せ、ギリシャにグループ首位を奪われてしまった。予選が残り2試合と場合によってはプレーオフもある。予選で呼ばれなければそのまま呼ばれない可能性もある。特にいい選手のそろう右サイドは激戦区である。ホアキン、ヘスーリ、ビクトル、エチェベリア、メンディエタ…。実力のある、しかも実績のある選手が並ぶ右サイド。そこを勝ち取るにはクラブで最高のパフォーマンスを見せるしかない。グラシアとルゴの挑戦はまだまだ続く。
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