□ 第11回「移籍」
ベティスを下した翌日、ルゴは若手スウェーデン人のキム・カルストロムを獲得したと発表した。グティの控えになりうる中盤の攻撃的な選手を探していたルゴとD1でのプレーを望んだカルストロムとの思惑が一致した結果だった。
この移籍市場では驚きが続くことになった。まず、セルタ・デ・ヴィーゴがミランから現役最高のCBの一人であるアレッサンドロ・ネスタを獲得して周囲を驚かせる。さらに、バイエルン・ミュンヘンがルゴのセルジにオファー、それを受けてルゴはあっさりとセルジの移籍に合意、そしてネスタの獲得で資金を使ったセルタからファンフランを獲得することを考えた。セルタ戦でのファンフランのプレーを見ているルゴのフロントはファンフランの獲得にかなり意欲的だった。セルジは海外でのプレーに興味を持っていたためこの話を受けることにした。突然のことだったため友人でもあるパウロ・ニエトも驚いたがセルジの海外でのプレーを経験してみたいという気持ちを察して激励の言葉で彼を送り出した。
ガリシアにやってきたスウェーデン人の選手を最初に出迎えたのは監督のサンティだった。「ガリシアへようこそ。」サンティはカルストロムとグティを併用、または縦に並べて左からの攻撃強化を考えていた。グティはライバルが増えることをあまりよく思っていなかった。レアル・マドリーでは次々にやってくるクラック達に居場所を奪われてきた経緯があるために当然だった。
9節のスポルティング・リスボン戦を前にルゴの選手たちはミニゲームで汗をながしていた。グラシアが下痢で9節を欠場する見込みとなっていたため、サンティ監督はミニゲームでカルストロムを右、グティを左で起用する布陣を試した。グティが新加入のスウェーデン人を歓迎していないことを知っているフェルナンド・メイラとメンディエタは後ろで見ながらヒヤヒヤしていた。「グティのやつ大丈夫かな?かなりピリピリしてたぜ?」メンディエタにメイラが話しかける。「まあ、キム君の出方次第ってとこだよな。」メイラとメンディエタが心配したとおり、グティとカルストロムの連携は最悪だった。グラシアには出さないような扱いの難しいパスばかりをカルストロムに回す。ジダンやフィーゴに出すようなボールを扱えるわけがない。カルストロムはなかなかボールを持てず困った表情でそれでも懸命に走り回る。しかし、そのうちスタミナが尽きてそれすらできなくなってしまった。
ミニゲームが終わって他の選手たちは多少息があがっている程度だったがカルストロムだけは今にも膝をつきそうなくらい疲れ果てていた。憮然とした表情で練習を切り上げようとしたグティにメンディエタが声をかける。「おいおい、ちょっとひどいんじゃないの?」表情を崩さずグティが「いつもどおりですよ!」と突っぱねたところに汗だくになったカルストロムがやって来た。「グティさん!」
“げ、新人やる気か!?”メンディエタがそう思ったとき、カルストロムがグティに頭を下げた。「すみません、たくさんパスもらったのに…」思わずメンディエタと顔を見合わせたグティだったがカルストロムがなかなか頭を上げないのでバツが悪くなってしまった。「ま、まあ、初めて組んだからな。次はちゃんと合わせろよ。」グティがそう言うとカルストロムはやっと顔を上げ「はい、がんばります!」と返事してまたグラウンドに走っていった。「また弟子が増えたな?」メンディエタに笑われ苦笑いしながらグティはクラブハウスに戻っていった。
スポルティング戦でデビューを飾ったカルストロムだったが、なかなか見せ場を作ることはできなかった。試合はラウトとルケが1点づつ決めて2−0で快勝したがカルストロムにとってはD1のレベルの高さを感じさせられる試合となった。即戦力として獲ってきたわけではなかったため、サンティはこの試合の出来についてはあまり気にしていなかった。とりあえずはジョーカーとして使うつもりである。
このスポルティング戦の翌日、ルゴのフロントは久保にトレードの話が進んでいることを告げた。トッテナムのエウデル・ポスチガとのトレード話が進展しているという話である。昨季はリーグ、カップ合わせて7ゴールを決めた久保だったが、今季はここまでノーゴール。ラウト、ルケの2トップが好調なだけに出番は減る一方であった。結局、久保はトレード話を受け入れてトッテナムに移籍した。ルゴでの最後の試合となったリーグカップ2回戦第1戦ではポルトから2得点を奪い意地を見せた。
久保が去った翌日、チームにファンフランとポスチガがやってきた。同じポルトガル人のメイラがポスチガを出迎えた。ガリシアはポルトガル国境と近いため、ポルトガルの選手には好評のようである。
移籍市場が閉じる頃、ルゴに駆け込みのオファーが来た。スパルタク・モスクワがGKファン・ゴヤに5383Ptsでの獲得を打診、そしてグティにはウェストハムが8701Pts、開幕から躓いたレアル・マドリーは買い戻しに9220Ptsのオファーを出した。ルゴがグティを7000Ptsで獲得したことを考えれば破格の値である。しかし、グティもゴヤも移籍する気などまったくなかったのでこの話は破談になったが、グティがかなり気を良くしたのは言うまでもない。シーズン終了後にはユーロ、そしてオリンピックもある。ユーロ出場を狙うグティやメンディエタ、そしてオリンピック世代のグラシアらにとっては重要なシーズン中盤、そして終盤戦となる。
第10節で3位につけていたリヨンをカルストロムのラッキーな初ゴールなどで3−0で下したルゴは11節のアトレティコ・マドリー戦も3−0で快勝し勝ち点差6で首位をキープ。首位でシーズンを折り返すことがほぼ確実になった。それでもサンティ監督は態度を崩さない。「まだ5合目だ。なにが起こるかわからないのがフットボールだよ。」
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