□ 第9回「ガリシアの戦い第2幕」
ソシエダ戦に勝利したルゴはホームでランスとのリーグカップ1回戦を戦い第1戦を2−1で先勝した。ルケとラウトのゴールが決まり調子も上向きである。しかし、翌週はインターナショナルウィークが入り代表選手たちは一時チームを離れることになる。ルゴからはスペイン代表にグティ、メンディエタ、ルケが呼ばれ、グラシア、アルテタ、ゴヤはU−23の方に呼ばれていた。他にもラウト、メイラ、サラビア、ジャンナコプーロス、オーイェルなど多数の代表選手を抱えるルゴである。
その影響もあり4節のディポルティーボ戦ではターンオーバーが使われた。ラウトの代えてサルバ、ジャンナコプーロスに代えてオーイェル、グティに代えてアルテタ、メイラに代えてトレショクである。さらに、ランス戦で軽い捻挫をしてしまったニエトを休ませてフリードリヒが先発メンバーに加わった。
ディポルティーボとのガリシアダービーはルゴのホームで行われる。今日はグティが欠場するため、グラシアはいつもの右OHではなく左OHで出場する。左足でも起用にボールを扱えるグラシアは前日練習でも左サイドで機能していた。左利きのMFがグティしかいないのが現在のサンティ監督の悩みでもあった。左利きでグティとは違ったタイプのMFを獲得してくれとフロントに打診しているものの返事は成績しだいである。
ルゴにとってはディポルティーボのスペイン代表CF、ディエゴ・トリスタンをいかに抑えるかがこの試合のキーワードである。本来ならニエトがマークすべきなのだがそのニエトは今日はベンチである。代わりにマーカーに入ったのはフリードリヒ。高さでは心配ないが足元で勝負に来られると不安が残る。
しかし、ルゴの問題はここではなかった。代表戦に出場したメイラの代わりにピボーテに起用されたドイツ人MFトレショクが大誤算だった。この日が初出場となるトレショクは守備時は中盤の底でボールを奪えず、攻撃時にはボール回しに上手く絡めなかった。ここでのミスをディポルティーボに突かれる。22分、簡単に中盤から抜け出したフランからトリスタンへ、オーイェルとフリードリヒとのマッチアップを物ともせず華麗なドリブルで二人を抜き去ったトリスタンが左からペナルティーエリアに入りGKゴヤとの1対1になる。ここでも簡単にゴヤの読みを外すとゴール右隅に先制のシュートを流し込んだ。
ディエゴ・トリスタンの魅せる華麗なステップに翻弄されっぱなしのフリードリヒ。ニエトを欠くルゴにとっては厳しい展開となる。さらにメイラのいない中盤も押されっぱなしである。代役に指名されたトレショクは今季から加入したドイツ人である。練習では時折いいプレーを見せるが、まだウェスタン・リーグに馴染んではいないというべきだろう。
サンティはこの展開に頭を抱えていた。右サイドのメンディエタ、アルテタのところ以外はまったくと言っていいほど機能しているとは言いがたい。左サイドで起用されたグラシアもマヌエル・パブロ、マウロ・シウバに捉まりゲームから消えかけている。2トップの2人もボールが来ないことには仕事ができない。イライラの募るルゴにトリスタンとミランからやって来たセードルフのコンビが襲い掛かる。バレロンがバルセロナへ移籍した後釜としてスペインに戻ってきたセードルフがトレショクを何度も翻弄してチャンスを作り出す。「トレショク!もっと右だ!引っかかるな!フェイントだよ!」後ろから指示を飛ばすGKのゴヤは大忙しである。前半だけでトリスタンに3度、セードルフに2度もゴールを脅かされている。なんとか1点で抑えているものの追加点も時間の問題か…。
前線でイライラを募らせる2トップは中盤にボールを要求する。「グラシア、こっちによこせ!こっち、こっち!!」サルバからボールを要求されるグラシアは中盤でまたマウロ・シウバに捉まっていた。フィジカルの強さではグラシアに勝ち目はない。「くそ、ファウルじゃないのかよ…」シウバに体を寄せられ何度もボールをとられそうになりながらなんとかボールをキープするグラシア。彼としても当然FWにボールを入れたいところだがベテラン、シウバがそれを許してくれない。
ち、業を煮やしたルケがボールをもらいに下がるとマヌエル・パブロ、ナイベトまで寄って密集になってしまう。3人に潰されて地べたを嘗めさせられるグラシアを尻目にまたトリスタンにボールが入る。マークに入るフリードリヒをかわしにかかるトリスタンにサラビアも寄せに行くが、その一瞬に空いたスペースをフランに突かれる。トリスタンからフリーでパスを受けたフランが飛び出しかけたゴヤに強烈な左足を見舞う。完全にバックステップでの対応となってしまったゴヤだったが背面飛びで必死に手を伸ばす。「届け!!」ゴヤの叫び声の中、ボールはゴヤの右手をかすめてポストのわずか左を通過してゴールラインを割った。
「届いたぁ…。」仰向けに倒れた状態で安堵の溜息をつくゴヤにサラビアが声をかける。「すまん、うかつだった。」サラビアの手を借りて起き上がったゴヤが厳しい顔つきで言う。「このままだとヤバイな。とりあえず0−1で前半をしのがないと…。」
「ラウール、下がって来い!!守れ!」最終ラインからセルジがグラシアに声をかける。うなずいたグラシアは渋々といった感じで下がってくる。守備は苦手なグラシアはセルジの前でプレッシャーをかけてセルジがインターセプトしやすいように動く。しかし、グラシアまで下がり目になったことでディポルティーボはさらに優位に試合を進める。
「グラシア、行かせるな!!」前半もロスタイムに入ったところでビクトルが右からドリブル突破をしかける。マークに行ったグラシアだがあっさりとかわされてしまう。「ち、足止めくらいしろよ!」慌てて止めにいくセルジだが間一髪間に合わない。右サイドを完全に切り崩したビクトルがペナルティー・エリアに入ると中に切り込む。
CBがトリスタン、セードルフに引っ張られてカバーに入れないのを見てゴヤが飛び出しビクトルと1対1になる。ビクトルはパスフェイントを交えたあとニアへのシュートを選択するが最後まで体勢を崩さず我慢したゴヤがなんとかゴールを守りきり前半を0−1で折り返した。
サンティは後半からサラビアをピボーテに上げ、トレショクに代えてスベンソンを投入した。DFラインを統率できるこのベテランCBがチームを立て直す。「サラビア、もう少しラインを上げるぞ、右のスペースも注意してくれ!」スベンソンが指示を出すことで最終ラインが安定しだしたルゴは反撃を試みる。サラビアがピボーテの位置でボールを奪取することで守備の負担が減ったアルテタが前に出て行く。それに連動してメンディエタとグラシアがサイドに開きワイドな展開に持ち込む。
“スペースさえあればやれる!”左サイドに張り出したグラシアが前半やられっぱなしだったマヌエル・パブロに果敢にしかけていく。さらにマウロ・シウバを引き付けて中央に入ってくるアルテタにパスを通す。この展開で同点弾が生まれたのは22分だった。中央でフリーになったアルテタがナイベトをつり出してルケへ、フリーになったルケの強烈なシュートをGKモリーナがなんとか触るが、こぼれたボールをサルバがつなぎルケが豪快に叩き込んだのだ。
ルケの一発でペースをつかむかと思われたルゴだったが、ディポルティーボはパンディアーニを投入して前線を厚くする。結局、両チームともゴールを奪えず1−1で試合は終わった。膠着状態をなんとか打開することがルゴの今後の課題といえるだろう。
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