□ 第8回「サンセバスチャンにて」
「来週はサンセバスティアンか〜。」セルタを下したルゴ、翌週はアウェイでのソシエダ戦が組まれている。昨季はレアル・マドリーの一員としてソシエダと優勝を争ったグティはあまりソシエダが得意ではない。昨季もソシエダ対レアル・マドリーは1勝1分けでソシエダに分がある。「ソシエダって強いんですよね??」相変わらず頭からネジが1本抜けた感じのするグラシアに呆れつつグティが答える。「さっきビデオ見たろ?」
バスク地方のサンセバスティアンに本拠地を置くレアル・ソシエダ。マスターリーグ機構が発足してからもっとも成功したクラブの一つといわれている。昨季はマドリーの“レアル”と張り合い、優勝は逃したものの実力は証明した。今季はノーザン・リーグのマンチェスター・Uからオレ・グンナー・スールシャール、そしてサザン・リーグのミランからカフーを獲得して戦力をさらに上乗せしてきた。
コバチェビッチとニハトで来るのかスールシャールで来るのか…。読みきれないながらもサンティは前節で良かったサラビアとニエトのコンビで固定したが、コンディションのいいオーイェルをジャンナコプーロスと代え、セルタ戦の前半でマズイ攻めを続けたグラシアをベンチに座らせて右サイドをメンディエタ、アルテタに代えた。さらに、ルケに代えてサルバを先発で起用してきた。これにはターンオーバーの意味合いもあるのだろう。
ベンチに座るグラシアはサンティにメンディエタをよく見ておくように言われていた。中盤の攻撃的なポジションで代表チームのスタメンもとったメンディエタである。グラシアより守備が上手いためグラシアの下で起用しているが実力はメンディエタのほうが上と言えるだろう。
試合が始まるとソシエダは苦手と言っていたグティが中心となりルゴがボールを回す。しかし、ソシエダもラインを崩さず対応する組織力の高さはソシエダの特長といえるだろう。中盤、DFラインとも質は高い。
ルゴはグティがシャビ・アロンソを上手く牽制しながらボールをキープする自分たちのフットボールをしようとする。しかし、ソシエダの新戦力であるカフーとスールシャールがこの目論見を崩す。
14分、早いプレスでグティからボールを奪ったシャビ・アロンソが右のカフーへ。カフーが右サイドを突破にかかるとセルジのファウルを誘いFKを得る。このFKをスールシャールが蹴るとゴール前の密集の前にシャビ・アロンソが飛び込み頭でゴールに流し込んだのだ。コバチェビッチやシュレール、ボリスを警戒していたルゴのDFは後方から飛び込むシャビ・アロンソを見逃してしまっていたのだ。
「だぁー、くそっ!!」悔しがりベンチを殴るサンティ監督に隣に座らされていたグラシアはビビる。“前節も俺のプレー見ながらこうだったのかな…”
試合開始からしばらくはルゴのペースで続いたこの試合だったが、先制したソシエダが攻勢を続ける。19分にはまたカフーがルゴのサイドを破りゴールに迫るが判断良く飛び出したGKファン・ゴヤが滑り込みなんとかボールを抑えた。
なんとか同点にしたいルゴだがソシエダの中盤のプレスがキツくFWにいいボールが入らない。前線でイライラを募らせるラウトがボールをもらいに下がると中盤はさらに混戦となり、前線のサルバは孤立する。
中盤で息苦しく動き回るメンディエタはアルテタと連携をとりながら突破口を模索する。グティが内へ、外へとポジションを変えながらスペースを探す。そのときメンディエタはグティが外に開いた瞬間、ゴール正面に空いたスペースに下がってきたラウトがフリーになるのを見つけた。「ラウト!!ポストへ!!」ラウトにそう指示しながらパスを入れる。ワン・ツーの形で抜け出そうとしたメンディエタだが、デ・ペドロがそこに割り込む。“ち、読まれたか?”しかし、ポストに入ったラウトからのパスはメンディエタではなく、その後ろから飛び出したアルテタへのものだった。
メンディエタの後ろで飛び出す機会を窺っていたアルテタはラウトのパスでDFラインのウラへ飛び出し、GKとの1対1になる。名手・ベステルフェルトとの一瞬の駆け引き。“GKの読みは?右か左か”一瞬のタメのあとアルテタが右足を振り抜く。GKの逆をついたシュートはゴール左に吸い込まれる。
一瞬のチャンスをものにしたルゴがソシエダに追いついた。今季初出場のアルテタの今季初ゴールである。ベンチに座っていたグラシアはメンディエタの機転の利いた判断とそれに連動したアルテタの動きに目を奪われていた。“あんなこともできるんだ…”
前半を1対1で折り返すことになったルゴとソシエダ。展開は一進一退といったところか。グティやメンディエタにタオルや着替えを持っていくグラシアにサンティが声をかける。「たまにはベンチで見るのも必要だろ?」こくり頷くグラシアだが、それだけではない。「後半は出番ありそうですか?」と監督に聞き返すあたりは怖いもの知らずの若造といったところか。「アップはしておけ。」それだけ言ってサンティは後半の作戦を伝えに行った。
後半に入ると試合は打ち合いになった。コバチェビッチとスールシャールがルゴのゴールを脅かせば、ラウトとサルバがカウンターで応酬する。しかし、両チーム点が入らないファン・ゴヤとベステルフェルトという二人のGKが素晴らしい競演を見せる。7分、サルバがDFをかわして左からシュートを放つもベステルフェルトが右手一本でかき出す。
“さすがはオランダの代表GK…。”逆サイドのゴールマウスでベステルフェルトのプレーを見ながらゴヤは闘争心をかきたてられていた。“俺だってあのくらい…”
闘志をかき立てられるゴヤにすぐその闘志をぶつけるチャンスが訪れる。右サイドを破ったカフーのクロスにコバチェビッチが飛び込む。そこに果敢に飛び出してパンチでボールを弾き出した。ひとついいプレーをすると調子に乗ってそのまま守りきってしまうのがゴヤである。逆にミスをするとそのまま自滅する面も併せ持つのが難点ではあるが…。
結局、このまま両チームともゴールを奪えなかった。出番のなかったグラシアはベンチで1−1のドローを告げるタイムアップの笛を聞いた。この引き分けでルゴの連勝は2で止まり3位から4位に後退した。しかし、チームは確実に自信を付けつつあった。
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