□  第7回「ガリシアの戦い第1幕」

  グティの鮮やかなミドルシュートで先制したルゴ。このゴールで流れをつかんだルゴはその後もセルタ・デ・ヴィーゴを攻め立てる。右サイドでは相変わらずラウール・グラシアがファンフランに挑んでいた。サイドに張り出してメンディエタのパスを受けてファンフランと対峙するが上手く、間合いを取られて抜きにかかれない。その間にセルタは中央を固めてしまう。「ラウール!!止めるなって!!」左サイドからグティに怒鳴られてグラシアはまたメンディエタにボールを戻す。“まずいなぁ、抜ける気がしなくなってきた…”強気だったり弱気になったりと波の激しいグラシアはやはりまだ若い。
 前線が攻めあぐねる中、最終ラインを守るのは大ベテラン、パウロ・ニエトと今日がデビューのパラグアイ代表CBのサラビアである。高いラインを維持しながらニエトはマークするカビエデスに注意していた。スピードでは分が悪い。自分よりスピードがあるサラビアにカビエデスを任せて自分はグスタボ・ロペスを見るか…。
 そんなことを考えてるときにニエトが心配した出来事が起きてしまう。右サイドでまたボールの流れを止めてしまったグラシアのバックパスをホセ・イグナシオがかっさらいモストボイへ。モストボイがチェックに来たフェルナンド・メイラをかわして足の速いスルーパスをニエトのウラに通す。
「しまったっ!サラビア、ゴール前だ!!」完全にカビエデスにウラをとられたニエトが必死に戻りながらサラビアに指示を出す。なんとかカビエデスのシュートコースに入ったサラビアだったが、自分のマーカーだったグスタボ・ロペスがカビエデスからフリーでパスを受け簡単にゴールに流し込む。ガリシア・ダービーは1対1の同点になった。
 “ヤバイなぁ、俺のせいかな…”前線でまた弱気になるグラシアにフォローに入り続けていたメンディエタが声をかけた。「勝負に行くなら行け。行かないならさっさと俺に戻せ。迷うならピッチから出ろ!」
 ベンチではサンティが選手交代を考え始めていた。“どうもグラシアがブレーキになっている。このままならアルテタを入れてメンディエタを前に出したほうが得策か…。”
グラシアが攻撃を滞らせていることによって影響はチーム全体に広がっていた。ボックス型の中盤で右の攻撃的な位置を担当するグラシアが攻めあぐねることでその下の位置を担当するメンディエタがフォローに回る回数が増える。それによって中盤の低い位置に残されるメイラの守備の負担が増えてプレスが緩くなる。プレスが緩くなるとDFラインはパスコースを読みきれずにオフサイド・トラップをかけにくくなる。この悪循環が明確な形となったのがセルタの同点ゴールであった。
 攻めあぐね、後ろからメンディエタに睨まれ、左からグティに怒鳴られ泣きそうな雰囲気のグラシアに助け舟を出したのは右SBのジャンナコプーロスだった。元々は攻撃的なSHのジャンナコプーロスが右サイドの大外を駆け上がりファンフランの注意を外に引っ張る。その隙にグラシアが縦に突破し中にクロスを放り込む。ヘッドで合わせたラウトのシュートはわずかに枠を外したが初めてサイドを突破したことの意味は大きかった。
 右サイドが機能し始めたことでルゴはチーム全体が上手く機能するようになった。後半に入るとセルタの縦へのパスはことごとくサラビアにカットされ、ルゴの波状攻撃がセルタのGKカバジェーロを襲い続ける。
中央よりにポジションをとるグティがボールを前線に中継し、オーバーラップしたセルジが左から、ジャンナコプーロスとの連携でグラシアが右からクロスを入れていく。なんとかしのぐセルタDFだが疲労の色は濃い。
 後半の20分を過ぎ、運動量の落ち始めたラウトに変わって久保が入る。昨シーズンはD2カップで5得点を挙げ優勝の立役者となっただけに久保には期待がかかる。ヘッドの強い久保をターゲットに左右からクロスが上がる。クロスの本数が増えるにつれてもう一人のストライカー、ルケのマークがずれていくのをジャンナコプーロスは見逃さなかった。
 後半39分、ワン・ツーで右サイドの深い位置まで持ち込んだグラシアにジャンナコプーロスが後ろから声をかける「ヒール!!戻せ!!」わけがわからずグラシアがヒールキックで戻したボールをジャンナコプーロスがダイレクトで中に入れる。ターゲットは久保の後ろでフリーになったルケだ。久保がファーでフリーのルケに気づいてニアに走りこむとDFはそれにつられてスペースができる。そのスペースに入り込んだルケが頭で合わせて勝ち越しのゴールを決めた。
 小さくガッツポーズを作るジャンナコプーロスにルケが駆け寄る。「最高のクロスだったぜ!!」二人を中心にルゴの選手が喜びの輪を作る。ホッとした表情でそれを見ていたニエトがサラビアに声をかける。「さて、しっかり締めていくか。」
 ロスタイムを含めた残り時間の約8分間、セルタが前に出る。出ざるを得ないというのが正しいだろうか。しかし、メンディエタに代わって入ったアルテタとメイラの中盤でのプレスが機能し、前線へのパスはことごとくサラビアがカットしていく。一番後ろで睨みをきかせるニエトはサラビアの取りこぼしを拾いすぐに前線に押し戻す。
 結局、ガリシア・ダービーの緒戦は攻撃的にゲームを進めたルゴに軍配があがった。試合後の会見でサンティ監督は記者の戦術論に関する質問に答えていた。
「攻撃的なフットボールと守備的なフットボールでは攻撃的なほうが好きだ。しかし、これは人それぞれの好みがある。いずれにしてもこの世界では勝てば生き残り負ければ去り行く。それだけは間違いない真実だ。シュート本数が10本に対して2本でも1−2で勝つこともありうる。だが、5本打たねば5点入ることはない。結果へのプロセスは限りなくある。それがフットボールなのだよ。」
 次節はアウェイでのソシエダ戦、そしてカップ戦を挟んでディポルティーボとのガリシア・ダービー第2弾が待っている。現時点でガリシアの盟主の地位にいるディポルティーボに対しどんな試合をするのか期待がかかる。最後はサンティの言葉で締めよう。
「攻撃的なスタイルで結果を出したい。ダメなら代わりにクーペルを呼べばいい、そうだろう?」
PS2RC

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