□  第6回「金星とダービー」

 サンティアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦を大金星でモノにしたルゴ。一番得意気な顔をするのは決勝点を叩き込んだレアル・マドリーのカンテラ育ちのグティである。勝っちゃったという顔をしたグラシアにヘッドロックをかけながらグティが褒める。
「なかなかいいパスだったぞ!だけど俺の利き足がどっちかくらいわかってるよな!?」
「えっ、グティさんなら右でも決めてくれると思ったから…。」
よく言うぜ、という顔をしながらグティがヘッドロックを外して肩を組む。
 そこにため息をひとつ吐きながら世界最高のラウール、ラウール・ゴンザレスがグティのところにやってきた。
「だから会長に手放すなって言ったのにさ。」とラウールが声をかける。
ちらっともう一人のラウール、ラウール・グラシアに視線をやる。
「でも、楽しそうで良かった。いいチームを選んだね。」
本物のラウール・ゴンザレスを前に硬直していたラウール・グラシアだったが、ハット思い出したように口を開く。
「あ、あの、ユニフォーム交換していただけません…か?」
快く応じてくれたラウール・ゴンザレスにペコペコと頭を下げながらグラシアは一足先にロッカーに引き上げていった。
「あれがうちとバルサが欲しがったラウール・グラシアか…。」ラウール・ゴンザレスがそうつぶやく。
「4年以内には代表でも出てくるかもな。ちょっと田舎っぺ過ぎるのがな…(笑)」
 グティに田舎っぺと言われていることなど知らずグラシアはもらったばかりの白いユニフォームを綺麗に畳んでバッグに入れた。同じ頃、ジダンとユニフォームを交換することに成功した大ベテランのパウロ・ニエトも背番号5のユニフォームを綺麗に畳んでバッグにしまっていた。密かにユニフォーム収集をしているニエトにとってはそういった意味でも楽しみな久々のトップリーグであった。
 昇格チームが昨季の王者から金星を拾ったというニュースで翌週は持ちきりだった。雑誌は早速特集を組みルゴを紹介した。その特集記事を読みながらニヤニヤしながらグラシアがグティに話しかける。
「グティさんの次に紹介記事が長いよ〜♪」
“また田舎っぺめ…”そう思いながらも自分が主役扱いの記事に口元が緩むグティであった。
 マドリーを倒したルゴだが次は同じガリシアのヴィーゴに本拠をかまえるセルタ・デ・ヴィーゴとの対戦となる。ディポルティーボ・ラ・コルーニャ、セルタ・デ・ヴィーゴとのガリシアダービーも今季のルゴの楽しみの一つである。
 ガリシアダービー第1弾、ルゴ対セルタ・デ・ヴィーゴはルゴのホーム、エスタディオ・ガジェゴで行われる。試合当日の天気は快晴。パスを回すフットボールを好むサンティ監督にとっては絶好のコンディションである。
 出だしでいきなりレアル・マドリーを沈めたルゴの選手たちはノリノリだった。グティやメンディエタらにとっては慣れたビッグクラブとの対戦だったがこのチームでレアル・マドリーに勝ったのは新鮮であり驚きであった。
 セルタはマドリー戦でルゴが見せたパフォーマンスに警戒していた。特に、グティ、メンディエタはよくチームを引っ張っている。この二人がいるからラウール・グラシア、ラウト、ルケといった若手が活きてくる。
 セルタは“ツァー”皇帝と呼ばれるアレクサンデル・モストボイを中心としたチームである。かつては攻撃サッカーで鳴らしたが、監督が変わり守備的なチームに変貌した。守備的なチームで躍進した点では同じガリシアのディポルティーボも同じである。それに比べてルゴは攻撃的なサッカーを展開する。ピボーテ一人とCBの二人を残してどんどん前線に上がっていく。そこがファンに受けている。
 試合は攻撃的なルゴが守備的なセルタを押し込みにかかる予想通りの展開を見せる。今季加入したピボーテのフェルナンド・メイラを残してメンディエタ、グティ、グラシアがアタッキング・ゾーンに侵入していく。セルタはGKカバジェーロを中心に堅い守りでこれを受け止めカウンターの機会を窺う。
 レアル・マドリー戦で深くまで切り込んでチャンスを演出したラウール・グラシアだったがこの日はファンフランとのマッチアップにてこずり自慢の右足を振りぬかせてもらえない。「ラウール、持ちすぎるな!!回せ、回せ!!」後ろからメンディエタに声をかけられ渋々ボールを離す。“クソ、絶対に抜いてやる”ビビリやすいクセに負けん気は強いグラシアである。攻めあぐねる展開に焦れるルゴだったが、超攻撃的サッカーをマドリーでしてきたグティはこういった展開も慣れていた。“こういう時は不意ってのが肝心なんだ”
 フェルナンド・メイラが強いフィジカルを活かしてヘスリからボールを奪い取るとグティへ預ける。「グティさん!!」ボールを要求しながら右のスペースへ走りこむラウトをチラッと見つつグティが左足を振りぬく。ゴール正面左より、だいたい30メートルくらいの距離から放たれたグティのシュートは走りこむラウトを警戒して前目にポジションを移そうとしたGKカバジェーロの頭上を越えてゴール右に突き刺さった。
 自分にボールが来ると思って走っていたラウトはボールがゴールに突き刺ささり、カバジェーロが苦々しい表情を浮かべるのを見て驚く。「あの距離から…?」
 「グティさん!!すげえや!!」まっさきに駆け寄ったグラシアと抱き合いそばによって来たラウトにグティは声をかける。「いいランだったぞ!あれでカバジェーロは騙されたわけだからな!」
 グティのゴールで前半18分に先制したルゴ。しかし、ダービーはまだ終わらない。
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