□ 第5回「グティの意地」
D1開幕戦からレアル・マドリーとアウェイで対戦することになったルゴ。その中で人一倍闘志を燃やすのがレアル・マドリーからやってきたグティだった。一流選手としての十分なポテンシャルを持ちながらレアル・マドリーの豪華すぎる顔ぶれの前にジョーカー的役割をさせられてきたこの男は明らかに顔つきが違っていた。
サンティアゴ・ベルナベウの威圧的な空気を感じながらルゴの選手たちがフィールドに現れる純白のユニフォームを着た世界のスーパースターを前にしてグラシアは少々ビビる。グティは顔では再会を喜んでいるが心には期すものがあるのだろう、目元が笑っていない…。
キャンプ以来グティを慕っているグラシアはレアル・マドリーの選手についていろいろと聞いていた。エルゲラのクセやらパボンの弱点やら…。「引き分けで十分だろうな…。」そう思っていたグラシアにグティが声をかける。
「絶対に勝つぞ…。引き分けでいいとか思ってんじゃないだろうな?」
グティにそう言われては勝ちにいくしかない。試合開始の笛と同時にボールを持つジダンにチェックに行く。“この人がジダンか…”どこか圧倒されつつもレアル・マドリーの中盤にプレッシャーをかける。序盤は明らかに様子見のマドリーだが、それでもシュートチャンスを作ってくる。15分、ジダン、ベッカムとつないで左に流れたラウール・ゴンザレスへ渡るとニエトを半歩かわしてゴール左隅へ正確なシュートを放つ。しかし、威力が十分でなかったためファン・ゴヤがしっかりと処理した。
対するルゴのD1最初の決定機は23分、右からのグラシアのCKをニアでラウトが合わせるもボールはポストを直撃。あわや先制という場面にベルナベウの観客はざわめいた。試合はそれまでマドリーのペースで進んでいたが、このラウトのシュートからルゴが攻める時間が続く。33分にはグティ、40分、45分にはラウトが狙うがいずれもGKカシージャスの牙城を崩すにはいたらなかった。
前半を0−0で終えたルゴだったが、チームの雰囲気はいい。キャプテンのニエトがチームを盛り上げる。
「いいぞ!レアル・マドリーにも負けてないぞ!このまま先制して金星をいただこうぜ!!」
この試合で気合が入っているのはグティだけではない。元バルセロナのセルジ、メンディエタにも自然と気合が入っていた。彼らにとってベルナベウでのレアル・マドリー戦はクラシコも同然なのだ。セルジはこの試合で何度もジダンを封じ、メンディエタは中盤でパスワークの最初の起点となってチームを支えていた。
“もしかしたらもしかするかも…”試合が始まるときには完全にビビっていたグラシアも多少心に余裕ができたようである。おっかない顔をしているグティを横目で見つつ後半のピッチへ駆け出す。
後半もメンバーは変わらず。開始4分でいきなりルケがチャンスを得てゴールを狙うがボールは枠を逸れる。5分にもルケがシュートチャンスを得るがこれも枠を捉えない。この2度のチャンスを作ったグティが今度はグラシアへチャンスを回す。しあし、グラシアのシュートはカシージャスの正面を突いてしまう。
出だしの10分を完全に支配されたマドリーだが、ラウールとロナウドが何度もDFラインのウラに飛び出し危険な動きを見せていた。11分にはラウールが抜け出してシュートまで持ち込むがオフサイドの判定でルゴは命拾いした。
それでも押していたルゴは14分、メンディエタが右サイドでボールを受けると、2トップのすぐ下に入り込んだグラシアへパスを通す。前を走る2トップに視線を飛ばしたグラシアに左から声がかかる。
「ラウール、よこせ!!」
視線を送ると同時に出したパスを左から走りこんだグティがノートラップで叩く。右足だ!グティの右足から放たれたグラウンダーのシュートは横っ飛びしたカシージャスの指先をかすめゴール右隅に転がり込んだ。
まさにグティの意地とでも言うべきゴールだった。ベルナベウは盛大なブーイングでこれを祝福した。マドリーはまだ余裕を失っていなかった。しかし、25分にルケに代わって入った久保が強烈な左足でカシージャスを驚かす頃になるとその余裕も消えムキになったマドリーの猛攻が始まる。
ルゴは28分に疲れの色が濃いグラシアを下げてアルテタを投入。彼も元バルセロナの選手だけに気合が入る。ましてカタルーニャ人である。マドリーのラウール、ロナウドを狙っての際どい攻撃をニエト、スベンソンが体で止めにかかる。セルジはジダンを止めるべく全神経を研ぎ澄ましていた。
後半終了間際の44分、レアル・マドリーに最後のチャンスが訪れる。この日SBに入っていたソラ―リからの長いパスがジダンにつられて上がり目になっていたセルジのスペースを突き、そこに走りこんだロナウドが中央のラウールにグラウンダーのパスを入れる。ボールはニエトとスベンソンの間を通りいつもまにかフリーになったラウールの足元に届くか否かのところでカットされた。カットしたのは最終ラインまで駆けつけたグティだった。
「せっかくとった1点だ。追いつかれてたまるかよ!」
その直後、審判の笛がベルナベウに響いた。ルゴはD1での開幕戦を大金星で飾ったのだ。
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