□ 第4回「ガリシアのラウール」
第2戦、ボルドーとの試合が行われるルゴのホーム、エスタディオ・ガジェゴは昇格を後押しすべく集まった大観衆に埋め尽くされていた。ラ・コルーニャ、ヴィーゴの強豪と並ぶまたとないチャンスにソシオは熱狂していた。
チームを率いるクラウディオ・サンティはこの日の先発メンバーを呼ぶといつにない真面目な口調で言った。「みんながこの試合を見ている。ルゴだけではない、ガリシアだけでもスペインだけでもない、ヨーロッパ中が、そして世界中がこの試合を見ている。そう思って戦おう。」
この日スタジアムにやってきたガジェゴを熱狂させたのはやはり、ラウール・グラシアだった。開始早々に右からのCKをアルテタの頭に合わせるとそのこぼれ玉をフリードリヒが体ごと押し込み先制点を決める。そして両手を天に振り上げて観客を煽り立てる。
「もっと力をくれ!!もっと!!」選手の見せる熱いフットボールは観客にも火をつける。ラ・コルーニャの初優勝のときのような、あんな盛り上がりを見せた。
そしてルゴ優位で進む中、このガジェゴたちがもっとも愛する“ガリシアのラウール”が昇格を決めるゴールを決める。バルケーロとサルバが華麗なワン・ツーでDFを突破するとGKを引き付けてボールを右に転がす。第1戦でグラシアにもらった1点のお返しとばかりに出したこのボールをラウールが右足で綺麗に流し込んだ。このプレーオフが終わればチームを離れるバルケーロのできうる最高の仕事だった。彼はルゴで自分が戦えるフットボーラーであることを証明した。サンティに左の司令塔という役割をもらい、計4本の貴重なゴールとアシストでチームをD1に近づけた。
他会場で1勝のランスが1敗のパリSGに3−0でリードしているという情報が入りスタジアムは揺れるような大歓声に包まれる。このまま試合が終われば昇格が確定する。ロスタイムに入るころには審判の笛など聞こえないほどの熱狂ぶりだった。
一足先にランスの勝利が決まりスタジアムは興奮の坩堝と化す。審判に終了のホイッスルを要求する口笛とルゴの応援歌が交錯する。審判が右手を挙げホイッスルを口から離した瞬間、ベンチから全員が飛び出しグラウンドに輪ができた。彼らはD1生きの切符を手にしたのだ。サンティが全員と握手し、がっしりと抱き合った。ガリシアに3つ目のD1クラブが誕生した瞬間だった。
第3戦でランスを下しサンティの宣言通り3戦3勝で昇格を決めたルゴは慌しくオフを迎える。GKにジミー・ニールセン、DFにサラビア、ミカエル・スベンソン、フェルナンド・メイラ、オーイェルを、MFにトレショク、スネイデル、FWにルケを補強し、イト、バルケーロ、バレラ、ミンゴらがチームを去った。
初のD1でサンティ監督の目標は残留、そしてヨーロッパ戦出場の切符である。残留については楽観視する向きが多いが、ヨーロッパ行きにはスペインの強豪がひしめくだけにかなりの健闘がなければ達成は難しい。
開幕に向けてキャンプを張るルゴは新加入の選手を加えて活気に満ちていた。特に、プレーオフでも活躍したラウール・グラシアはレアル・マドリーから来たグティの刺激的な話に夢中だ。ジダン、フィーゴ、ロナウド、ベッカム、そしてラウール・ゴンザレスら世界のスーパースターと戦ってきたグティの話はD2しか知らないラウール・グラシアには夢のような話だった。
しかし、開幕戦の相手がレアル・マドリーに決まるとチームのムードはピリピリしたものに変わった。さらにセルタ、ソシエダ、ラ・コルーニャ、バレンシアと続く厳しい日程である。特にセルタ、ラ・コルーニャとのガリシア・ダービーは気になるところである。
そしていくつかの調整試合を経て、ついにルゴがユーロ・ウェスタンリーグD1の舞台にあがる。初陣となるのはサンティアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦。昨季のD1王者である。
ルゴは新加入の選手を加えながらも昨季同様の4−4−2でこの試合に臨む。メンバーは下記のとおり。
CFラウト
CFルケ
OHグティ OHラウール・グラシア
DHフェルナンド・メイラ CHメンディエタ
SBセルジ SBジャンナコプーロス
CBMi・スベンソン CBパウロ・ニエト
GKファン・ゴヤ
ルイス・フィーゴ、ロベルト・カルロスを失ったレアル・マドリーだがその力は決して落ちていない。退いてカウンターなど絶対にしないサンティ監督に率いられ、ルゴは正面から白い巨人に立ち向かう。
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