□ 第2回「選手層」
ユーロ・ウェスタンリーグ・ディビジョン2の開幕まであと2日と迫ったルゴの練習場にはサポーターが多く集まっていた。新加入の選手のサインを欲しがる子供たち、ミニゲームを見ながら開幕戦のスタメンを予想する中年ファン、子供を見守るようにシュート練習を見つめる老人…。人口わずか8万のルゴではほとんどの住人がルゴを応援する。ディポルティーボやセルタのように強くなくても応援だけはやめない。
ガリシア人、いわゆるガジェゴはやさしい民族だと言われる。だからディポルティーボやセルタはブラジル人を中心とした外国人選手が活躍できるのだと。しかし、外国人選手の活躍はこの地方からカンテラ育ちの選手が出にくいという弊害をもたらした。デポルティーボでガジェゴなのはフランくらいだろう。
それだけにこのルゴにいるカンテラ育ちのラウール・グラシアはソシオのお気に入りである。オフに5年契約を延長したばかりのグラシアはこのクラブで一流選手になることを誓っている。
シーズン開幕となるホームでのベンフィカ戦は0−0で引き分けたものの2節でフラムを2−0で破ると波にのり5勝2分けで前半戦を折り返した。7節終えてわずか失点3というのがチームの強みであった。第7節で首位対決となったランス戦を2−0で勝利したあと、GKのファン・ゴヤはこう語った。
「チームはノッているし俺も調子がいい。このままプレーオフ行きを決めてしまいたいね。終盤までもつれるときつくなるのは間違いないからね…。」
しかし、流れはゴヤの言うようにはうまく流れなかった。8節でベンフィカに2−1で敗れると続くフラム戦は勝ったもののブレシア戦で分け、オセールに1−0で辛勝、モナコに分けと徐々に2位、3位との差がなくなっていく。残り3節を残した時点でルゴは2位に後退していた。
選手層の薄いルゴにはターンオーバーはもちろん、試合中の効果的な選手交代すらままならない状態が続いた。特に3人しかいないFW陣と守備的なピボーテがイトしかいない中盤は火の車だった。D2カップでも勝ち進んでいたため疲労はたまる一方だった。
3位モナコと勝ち点差5、首位ランスと勝ち点差2で迎えた13節のマジョルカ戦、ラウール・グラシアは疲労困憊で欠場、アルテタ、メンディエタ、すでにボロボロのイト、バルケーロの中盤で必死にボールをつなぐが、ラウトとサルバのシュートは枠にいかない。
「なんとかしろ!」叫び声をあげながらセルジが左から何本もクロスを上げるがこの日のラウトのプレーには精細がない。「わかってるよ!!」といつもなら叫び返してくるラウトが歯を食いしばって下を向く。みんな辛い状態だった。ベンチで仲間を励まそうと声を出すラウール・グラシアにもいつもの元気がない。
「ラインを上げろ!!下がりすぎだ!!」ベンチからサンティ監督が声を荒げる。ラインを統率するニエトも疲労を隠せない。
「くそっ、ラインを下げさせるか…。」サンティがラインを下げることを考えるなどシーズン通して皆無だった。そのサンティが迷うほどチームは疲弊していた。しかし、このサンティの迷いがチームに混乱を招いてしまう。
前半28分、拙攻を続けるルゴにマジョルカがカウンターで噛み付く。ハーフウェーラインあたりでセルジからボールを奪うと一気に長いボールを中途半端なDFラインの裏へ通す。これに半歩早く反応したエトーがフリーになって独走態勢に入るとニエトもフリードリヒも成す術がなかった。そのまま先制点を決められルゴの戦意は一気に落ちる。
士気の落ちたルゴにマジョルカはもう2点追加して3−0という決定的な差をつけた。サンティはモナコが2−1でリードしているという情報を得てさらに落胆した。このままモナコが勝ってしまえば最終節までもつれることになる。しかも、この試合をこのまま0−3で落とすことになれば得失点差でリーグ優勝も厳しくなる。しかし、この日のルゴには点差を3点で保つことしかできなかった。モナコが終了間際に追いつかれてプレーオフ進出は決まったが、この試合の出来はプレーオフに向けて不安を残すことになった。
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